法令順守
「知らなかった」では済まされない ― 不法就労のリスクとNG事例
外国人材の受け入れで、経営に最も大きな傷を残すのが不法就労です。しかもこの罪は、「不法就労だとは知らなかった」で免れられるものではありません。在留カードの確認を怠ったなどの過失があれば、処罰の対象になります。この記事では、経営者が知っておくべき3つのリスクと、現場で実際に起きやすいNG事例を整理します。
1. 経営を揺るがす3つのリスク
| リスクの種類 | 具体的な影響 |
|---|---|
| ① 不法就労助長罪 | 入管法第73条の2に定められた罪です。過失であっても処罰の対象になります(下記の「罰則の引き上げ」もご確認ください)。 |
| ② 受け入れができなくなる | 出入国又は労働に関する法令に違反すると、特定技能の受け入れ機関としての基準を満たさなくなります。1人の違反で、その後の受け入れが一定期間できなくなることがあり、影響は違反した本人にとどまりません。 |
| ③ 社名の公表と信用の失墜 | 行政処分の内容は公表されることがあります。取引先の与信・コンプライアンス審査に響き、人手の問題が販路の問題に変わるおそれがあります。 |
罰則は2027年4月に引き上げられます
不法就労助長罪の罰則は、2024年の入管法改正により引き上げが決まっています。現在(2026年8月時点)は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(またはその併科)ですが、2027年4月1日の施行以降は5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(またはその併科)となります。
上限が引き上げられるということは、これまでなら罰金で終わった事案でも、より重い判断がされうるということです。「これまで大丈夫だったから」は、これから先の根拠になりません。施行前の今のうちに、確認の手順を仕組みとして整えておくことをおすすめします。
※罰則の内容は法改正により変わります。個別の事案の判断は、必ず最新の法令と専門家の確認のうえで行ってください。
2. 現場で起きやすい4つのNG事例
NG①「日本人より安く雇う」
地域の最低賃金を守るのは当然として、特定技能では「同じ仕事をする日本人と同等以上」の報酬が要件です。安く雇うために外国人材を採る、という発想そのものが制度に反します。賃金の設計は、受け入れの入口で必ず確認すべき項目です。
NG②「農繁期だけの助っ人」
忙しい時期に、在留カードを確認しないままSNS等で集まった人を日払いで雇う。これは典型的な不法就労助長です。短期だから・紹介だからという理由で確認を省くことが、最も危ない入口になります。
NG③「勝手な職種変更」
ある業務内容で受け入れた特定技能の方に、許可のない別の作業だけをさせ続けると、資格外活動として入管法違反になりえます。人手が足りない部署に「ちょっと手伝わせる」のが常態化していないか、現場の実態を点検してください。
NG④「偽造カードへの無対策」
在留カードは偽造されることがあります。出入国在留管理庁が提供する在留カード等読取アプリケーションでの確認を怠り、結果として偽造カードだった場合、確認義務を果たしていなかったと問われるおそれがあります。目視だけで済ませない運用にしておきましょう。
3. 労働法違反は、入管法違反につながります
多くの経営者が「残業代の未払いや低い賃金は労働基準監督署の問題」と考えがちですが、外国人雇用の場合は話が違います。労働関係法令に違反した時点で、在留資格の前提が崩れるためです。適正な労務管理は、労務の問題であると同時に、在留資格を守るための要件でもあります。
- 適正な労務管理 — 最低賃金の遵守、労働時間の管理(天候による変動への配慮)
- 不法就労の防止 — 在留カードの見方、在留期限の管理の徹底
- 社会保険への加入 — 法人、または一定条件を満たす個人経営では加入が必要です
4. 明日からできる確認の手順
- 採用時に在留カードの原本を確認し、読取アプリで真正性をチェックする
- 在留期限を一覧で管理し、更新の3か月前にアラートを出す
- 実際に任せている作業が、許可された活動の範囲に収まっているか定期的に見直す
- 雇用契約書のとおりに運用できているか(賃金・労働時間・休日)を点検する
どれも特別なことではありませんが、忙しい時期ほど省かれやすい手順でもあります。仕組みとして回るところまで整えておくことが、経営を守ることにつながります。
まとめ
不法就労は「悪意のある会社が起こすもの」ではありません。確認を一度省いたことが、5年先の受け入れと会社の信用を失わせます。あさひほうむは社会保険労務士・行政書士が在籍する登録支援機関として、労働法と入管法の両面から受け入れ体制を点検します。すでに受け入れている企業の点検だけでも承っていますので、お気軽にご相談ください。
関連情報
→ 受け入れ前に企業が準備すべきこと【チェックリスト付き】
→ 外国人材の労働災害を防ぐ ― 現場でできる安全対策
→ 特定技能とは(制度の全体像)