安全衛生

外国人材の労働災害を防ぐ ― 現場でできる安全対策

外国人材の受け入れが広がるなかで、労働災害は見過ごせない課題になっています。厚生労働省のまとめでは、2024年の外国人労働者の労災による死傷者数は6,244人で、初めて6,000人を超えました。うち死亡者は39人です。この記事では、なぜ起きやすいのかという原因と、現場ですぐ始められる対策を整理します。

出典:厚生労働省の労働災害発生状況のまとめ(2024年)。在留資格別では技能実習1,874人、特定技能810人と報じられています。

1. 災害には必ず原因があります

使用者は労働者が安全に働けるよう配慮する義務(安全配慮義務)を負っており、その不足が災害の背景になります。これを予防する目的の法律が労働安全衛生法です。労働災害は「運が悪かった」ではなく、防げたはずの原因があった結果だと捉えるところから対策が始まります。

2. なぜ外国人材の現場で起きやすいのか

主な要因は「言語」「経験」「文化」の複合です。どれか1つを直すだけでは効きにくく、3つを合わせて手当てすることが大切です。

  • 言語の壁 — 安全標識やマニュアルの日本語が理解できず、危険を直感的に察知できない
  • 安全教育の不足 — 現場の忙しさから、機械の正しい操作方法や保護具の重要性を十分に教えられていない
  • 「遠慮」の文化 — 疑問や不安があっても、上司や日本人の同僚に聞きにくい心理的な壁がある

事故の種類としては「はさまれ・巻き込まれ」「転落・墜落」「転倒」が上位を占めます。いずれも、手順を知っていれば避けられた類型です。

3. 今日から変えられる伝え方

「わかった?」と聞かない

「わかりましたか?」に対する「はい」は、理解の証明になりません。理解していなくても「はい」と答えてしまうためです。かわりに「今から何をするか、説明してください」と聞き直し、本人の口から作業内容を言ってもらいましょう。これだけで、伝わっていない箇所がその場で見つかります。

指差し呼称を一緒にやる

日本の現場で培われてきた指差し呼称は、言葉の壁を越えて機能する安全の型です。「外国人だけにやらせる」のではなく、日本人の社員も一緒に実践することで、現場の文化として定着します。

「日本語が通じない前提」で環境を整える

努力で言葉の壁を越えてもらうのではなく、通じなくても危険が伝わる仕組みをつくります。安全教育の図解化、チェックリストの多言語化、写真つきの手順書などが効果的です。結果として労働者側の安心感が高まり、離職の防止にもつながります。

4. 体調とメンタルへの目配り

  • 体調のヒアリング — 疲労や睡眠不足は事故に直結します。朝礼などで顔色を確認し、体調を言い出しやすい雰囲気をつくる
  • ヒヤリハットの共有 — 事故になりかけた事例を本人から出してもらい、それを叱らずに称賛する仕組みにする

ヒヤリハットは、報告した人が責められる職場では絶対に上がってきません。「言ってくれてありがとう」を徹底することが、次の事故を防ぎます。

5. 保険の加入状況も確認を

万一に備えるという意味でも、労働保険・社会保険の加入状況の確認は欠かせません。法人か個人か、常時使用する労働者の人数によって、強制加入となるか任意加入となるかが変わります。農業など事業の種類によって扱いが異なる部分もあるため、自社がどこに当てはまるのかを一度整理しておくことをおすすめします。

まとめ

安全対策は、コストではなく人材の定着そのものです。「この会社は自分の安全を本気で考えてくれている」という実感は、言葉の通じにくさを補って余りある信頼になります。あさひほうむは社会保険労務士法人を母体とする登録支援機関として、安全衛生と労務管理の両面から受け入れ現場を支えます。

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